田中忠三郎氏「物には心がある。」



今日は、歴史民俗研究家、田中忠三郎さんを、ご紹介します。
アミューズミュージアム名誉館長 3月5日に昇天されました。

「物には心がある。」
この本には、青森地方の暮らしと衣にまつわる話が、書かれています。
田中先生の衣への、温かく情熱のこもった話は、まるで目の前で語られてるかのようです。

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私の手元には今でも、そのときに母が遺してくれた二枚の「綴れ」(刺し子)がある。
「刺し子」は、布地を二枚合わせて全体に針目を刺し綴ったもので、縫うのに手間がかかる。
働き者だった父のために、母が心を込めて縫ったものである。

母が亡くなっても、私に引き継がれた生命があった。想いがあった。

その母をこの世に産み出した祖母も布を大切にする人だった。
私が幼い頃にいたずらに布にはさみを入れると、
厳しい顔で「肉を切るのとおなじことだ」と叱った。

それほどに衣と布は、人間にとって大切でかけがえのないものなのである。
布には生命があり、祈りが込められていた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー(引用 p.165)

人の生きる姿を見つめる中で、縄文土器、古民家の民具や古着の収集保存をされました。
苦しい暮らしの中で集めたBOROの衣は、黒沢映画「夢」に使用されました。

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(青森では、旅人は家々で歓迎され、親族以上に丁寧に扱われた。省略)

特に「針」を持った者は歓迎された。
糸はなんとか自分で紡ぐことができるが、針がない限り、縫い物仕事はできない。
ある村を歩いていたら、女の悲鳴のような鳴き声が聞こえてきたので、何かと思ったら、
針を折ってしまった女の声であったという話が残っているくらい、
針は貴重品だったのだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー(引用 p.57)

雪に閉ざされた囲炉裏端で、家族を想い、ひと針一針、縫っていた風景。


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青森地方の、こぎん刺しのタッツケ袴です。
(アミューズミュージアム所蔵品・館内撮影許可所にて)
白い一面の布地に、紺の糸、白い糸で、刺し子が施されています。
まるで織物のようですが、刺繍のように糸だけで、模様ができています。
この手間のかけ方は、気の遠くなるような時間で生まれた物です。

棉の栽培は、北限は山形・新潟辺りだそうです。
青森では、麻などの布に、木綿の糸で刺し子をしていました。
麻糸は作れるし、麻布は織ることはできる。
木綿は外から手に入れる貴重品でした。
寒い中で、木綿の糸の温かさは、どれほどに貴重だったことでしょうか。

ある村には、色糸が物々交換で手に入り、華やかなこぎん刺しが生まれた。
色糸が手に入らなかった村も、多かったそうです。
それが、白と紺だけで、より複雑に文様を産み出すことへ繋がったそうです。

「布が一寸四方、豆が三粒包める布は、取っておけ」
そう言われるほどに、木綿の布や糸は、貴重なものだったと言います。

私が、タッツケ袴を調べる中で、感銘を受けました。
いつか田中先生のお話を、お聞きしたいと思っていました。
収集品は、アミューズミュージアム(浅草)と国立民俗博物館(大阪)にあります。
残して下さった品々を通して、お言葉に耳を傾けたいと思います。

私たちの先人の慎ましい暮らし。
衣食住。衣が一番先に来る意味。
明後日の小袖生活ちくちく教室の始まりに、様々な想いがこみ上げてきます。

「物には心がある。」田中忠三郎氏(アミューズミュージアム発行)
夜ばいの話、盆踊りの体験者ならでは♡、楽しい話もたくさんありますょ(笑)


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