土・炎 窯たき その4
〜竜合窯にて〜
やがて、窯主さんの「これで、えぇでしょ」の声で、次の薪くべで、ラストだと知る。
恍惚の時間との別れ。窯を閉じてしまう。
いよいよ、最後のおおくべ。
下の焚き口でも、大量の薪が用意される。
私のいる、上の脇の焚き口でも、大量の薪が、積まれる。
準備が整ったら、上脇の私から、最後の薪入れ。
2束を超えても、薪を入れていくと。
さっきまでの龍舌の炎よりも、
さらにさらに、暑い熱線の炎が出ずっぱりになる。
二重の軍手に革手袋をした手が、熱くて痛くなってくる。
てぬぐいを巻いた顔も、痛い。
ひるまずに、薪を入れる空間が、薪で埋め尽くされるまで、入れる。
周りにある、器に触れないように、冷静にくべていく。
1時間の疲れなど、軽々と超え切って、からだは、なぜか軽くなる。
炎の中で、薪がどんどんと、山と高く積み重なっていく。
赤々とガラスの固まりのように熱した器たちの輝きに、薪の影が映る。
この一瞬の輝きの中に、この数日間の大量の薪のエネルギーが、詰まっている。
窯主さんをはじめ、大家族のみんなの気迫が、注ぎ込まれている。
もう、これ以上、空間に薪が入らなくなり、上の脇口を閉じる。
下の焚き口では、最後の全員総出で、入れ替わりに薪の投入。
もう、みんな、ナチュラルハイ!
ポイポイ、きびきび!列になって、ぐるぐると、人も薪も回りだす。
いつのまにか、こころの躍動が、みんなに伝わって、ダンスをしているかように。
だれかが、薪を入れそこなって落としても、笑顔がこぼれる。笑いが起こる。
そして準備しておいた「モルタルを持ってきて」の声で、焚き口を閉じる。
総出で、あらゆる穴を、一斉に塞いでゆき、皆が無口になる。
モルタルを、窯めがけて投げつける湿った音と、静寂が、すべてをつつむ。
さっきまで、辺り一面に漂っていた、窯の妖気と、仲間のほがらかさ。
それが、内に渾々とマグマをたたえた、窯の霊気だけに変わる。
初日は、窯の周りに、圧倒されるほどに、ぎっしりと積まれていた薪が、
すべて窯に、飲み込まれて、消え去っていった。
辺りは、がらんとして、しずかに風が通り抜けていく。
- 関連記事
-
- ◆マインドフルネス・ガーター作りワークショップ体験/何もしないをする 2017/08/16
- 土・炎 窯たき 最終日 2012/09/28
- 土・炎 窯たき その3 2012/09/25
- まんだら 2013/01/04
- 土・炎 窯たき その1 2012/09/22
Comment