土・炎 窯たき 最終日

窯たき 究極の名人
  今まで出逢った中で
  一番の窯たき名人「ムサシ」

「お疲れさまでした。お茶でも飲みましょう。」
台所組のさわやかな声で、安堵と達成感が、一気に押し寄せてくる。
このからだの重みを、やっと感じる。

窯焚きだけに集った仲間と、最後のお茶のひととき。
みんなが、少し間を取りながら、とつとつと、想いを語る。
夜通し語り合って、人生や悩み話まで、共有しあえた人たち。
炎を囲むと、人はだれでも、こころが裸になる。

一杯のお茶を、もう一杯と、名残を惜しみながら。
やがて、一人、また、ひとりと帰ってゆく。

みんなが去った後、小さな灯りの下で、窯主さん夫妻との3人での夕飯。
もう話すことがないようでいて、話しは溢れるほどに、すでに家族なのだった。
みんながいた余韻が、暗がりのソコかしこに、確かにある。

翌朝、帰る前に、もう一度、窯に逢いにいく。
ひっそりと窯だけが、横たわっている。

素手で触れると、まだまだ熱い。
土の固まりの窯が、まるで、脈を打っているかのように感じる。
そこには、人はだれもいない。
でも、確かな生き物の気配がある。

大きなナマコ型の土の固まりの窯。
内に、たくさんの器を、身ごもって、そこに横たわっている。
波が引いていくように、やがて、この温もりも、冷たい土の固まりに還っていく。

初めて、私が、夜の窯と向き合ったのは、18才。
それから、約20年。土と炎との日々だった。

幾度、向き合っても、窯との情感は尽きない。
その情感を、味わう仕事から離れても、
この空間は、炎の恍惚と、いつも、つながっている。
静寂のしじまに。

〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜

5回に渡り、窯たきへの想いを、つづりました。
離れてみて、やっと、言葉になりました。
事情があって、作陶をしていませんが、
貧しいながらも、こころは豊かで、幸せな時間だったと思います。
読んでくださり、ありがとうございました。
布や、小袖との日々も、また、つづっていきますね。おたのしみに〜。
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